つれづれ夜咄(旧韓ドラ・懐かし映画・時々ビョンホン)

韓ドラ・懐かし映画・時々ビョンホンのリニューアルブログです。内容少し変更

プレイボーイの失敗「末摘花」

おこの物語(バカ話)「末摘花」
平安時代の結婚は夫婦同居ではなく、男が女の家に通う「通い婚」。
源氏の正妻は左大臣の娘葵上ですが、源氏はこの妻とはどうもしっくりいかなくて「夜離れ(よがれ)がち」。つまりあんまり妻の家へいかないんですね。
将来は妻にと思う若紫はまだ幼いですから恋愛の相手にはできない。そこで「どこかにいい女はいないか」と思って、ぶち当たった相手が末摘花。
好き者=プレイボーイは見境なく手を出しますから時には失敗、ひどい相手につかまってしまうこともある。
末摘花は常陸宮(ひたちのみや)という王族の娘なのですが、父が亡くなってしまい、荒れた屋敷に琴だけを相手に寂しく暮らしていると、源氏の乳母だった者が噂を持ち込んでくる。
にわかに興味をそそられた源氏ですが、乳母はうっかり話したことを後悔する。というのも姫君はとても源氏の気に入るような魅力ある女性ではないことを知っているので。でももし源氏と関係ができれば姫君にもそしてそれを手引きした自分にもいいことに違いないと、常陸宮の邸に案内する。
十六夜の月のもと、琴が聞こえる。さして上手とは言えないが、心そそられる場面である。
源氏は歌を贈る。会い逢う前に「歌の贈答」というのは貴族の男女の恋愛の常識。
しかし一向に手ごたえがない。じらしているにしては度が過ぎている。姫君は全く世間にうとく、男女のことも誰も教えてくれる人もなくどうしていいかわからない。仕方なくわずかに仕えている女房が歌の代筆をする。
どうもおかしいなと思いながらも、ライバルである頭中将もどうやらこの姫君に興味を抱いているらしいと知ると、出し抜いてやろうと出入りの女房に手引きさせて姫君の部屋へ。姫君はむやみに恥ずかしがるだけで、どうもようすがおかしい。
この時代電気はないし、暗がりの中で相手の容姿ははっきりわからない。
がっかりした源氏ですが、それでも縁ができた以上「お世話しよう」と思う。ここが本当のプレイボーイの在り方ですね。決して見捨てない。
そしてある雪の日、久しぶりに訪れ、朝を迎えて源氏は姫君の姿をはっきり見てしまう。
この時代高貴な身分の女性というのは冬なら寒さしのぎにたくさん着物を着こんで、座っているというか、横になるような姿勢でじっとしているのですね。立って歩くということはしない。いざって移動する。
ひどく背まがりに見えた。つまり胴が長い。それで背をまげているのですね。
そして顔ときたらひどく長くて、鼻が大きく長く伸びていて、先が赤い。見るに堪えない不器量さですが、源氏は珍しいもの見たさでつい観察してしまう。多分栄養失調なのでしょう、ひどく痩せていて、ただ髪だけは黒くたっぷりとある。
気が利かない上にこの不器量さでは誰も男は寄り付かないだろうと思うと、源氏は他に行くところのない老女房の分まで衣類など使いに持たせてやるのだった。
作者式部は「これでもか」とこの姫君のどうしようもない性格を情け容赦なく書いている。バカ話というには度が過ぎているじゃないかと思いました。
源氏は二条院に帰って、絵をかいている若紫のそばで、自分もたわむれに長い髪の女を描きその鼻の先にチョンと紅をつけたのだった。