つれづれ夜咄(旧韓ドラ・懐かし映画・時々ビョンホン)

韓ドラ・懐かし映画・時々ビョンホンのリニューアルブログです。内容少し変更

娼婦夕顔

源氏が夢中になった女性夕顔
大雨のニュースが連日伝えられています。梅雨真っ最中。こんな時期に咲く花に夕顔があります。
平安時代の京都にあって、庶民の住む場末といっていい五条あたりの粗末な家に隠れ住んでいた女性夕顔。その夕顔に乳母の見舞いの途中で出会った源氏はこの素性のよくわからない女性に惹かれます。
心行くまで逢瀬を楽しむには五条の家は狭すぎます。そこで源氏は夕顔を別の場所に連れ出します。「なにがしの院」と表現される誰も住んでいない邸。とはいえ管理人はいますから、従者の惟光がうまく話をつけて、源氏を案内します。
そして夜中、不意に怪しい気配がして、おびえた夕顔は命を落してしまうのです。驚いたのは源氏。もうどうしていいかわかりません。従者の惟光を呼びます。全く便利な存在です。亡くなってしまった夕顔をひそかに東山にある墓地に埋葬し、夕顔に一人付き添っていた右近という侍女は源氏の邸に引き取ってしまう。右近も女主人が亡くなってしまったのですからどうすることもできず、源氏の正体を知った後には五条に残っている人達に知らせに行くわけにもいかない。源氏が素性の知れない女を廃屋に連れ込んで結果死なせてしまったなぞということが噂になれば今は主人になった源氏の命取りです。
後にわかることですが、夕顔は身分で言えば中流貴族の娘、しかし親が亡くなってしまった後は通って来る男に身をゆだねるしかなく、そんな中に源氏にとっては妻葵上の兄、頭中将がいた。中将との間に女の子生まれたのですが、これが後に登場する玉鬘。母が行方不明になってしまったので、乳母が連れて、自分の夫の任国九州の筑紫に下っていく。
夕顔は男にとってこれ以上ないほど都合のいい女として描かれます。なにしろ男のなすがまま。何処と言って特徴はないのですが、感性がにぶいというのでもない。捉えどころのない女性です。もう源氏は夢中。同じころに付き合っていた六条御息所とは対照的です。夕顔の命を奪ったのは「六条御息所の恨み」ということになっていますが、これは実は源氏自身の心の後ろめたさがそう思わせているということのようです。
男性の読者に聞くと「源氏物語」に登場する女性の内一番好きなのは夕顔で、嫌いというか苦手なのは六条御息所なんだそう。
「あなた好みの女になります」というのが夕顔。後ろ盾のない平安貴族の女性は娼婦のように生きるしかなかった。それが夕顔。